一般社団法人 愛の知から
代表理事 辻大輔
今いる人材を「人財」に変える。——一人ひとりと、いちいち向き合う

「いちいち向き合う」——恩師の姿が事業の原点に
Q.現在の事業や経営に対する考え方の原点となった、これまでの経験や転機について教えてください。
建設業で独立した当時、知識もなく、学び方さえ分からなかった僕を救ってくれたのは、近所の町工場のおじさんたちでした。10年間で600人以上の経営者に突撃インタビューを重ね、経営を学び、会社を設立しました。
しかし社長就任後、「会社が伸びない」と悩んだ時期がありました。そんな時、中学時代の恩師が、かつて自分に「いちいち向き合って」くれたことを思い出したんです。
「昔の自分と同じように、今いる社員一人ひとりに愚直に向き合おう」と決意しました。
その後、特攻隊員の遺書に触れたことで「本当の愛」とは何かを考えるようになり、全社員に解雇を告げるほどの覚悟を持って社員と向き合った経験を経て、本当の信頼関係を築くことができました。
この「いちいち向き合う人財育成」こそが、現在の事業の原点です。
“この「いちいち向き合う人財育成」こそが、現在の事業の原点です。”
全社員に「解雇」を告げた日——判断基準は、相手の人生の幸せ
Q.これまでに行った大きな意思決定と、その際に大切にした判断基準を教えてください。
最大の意思決定は、自社の全社員に対して「解雇」を告げたことです。
知覧での研修で、特攻隊員の命を懸けた想いや遺書に触れた際、「社員を大切にしている」と思っていた自分の姿勢が、実は自己満足だったのではないかと痛感しました。
「もっと良い社長のもとで輝いてほしい」。
そう考え、涙をこらえながら全社員に別れを伝えました。
この決断で大切にした判断基準は、自分の立場や保身ではなく、「相手である社員の人生にとって、本当に幸せにつながる選択なのか」という一点です。
その覚悟と誠意が伝わり、後に社員たちは戻ってきて、自ら面接を受けたいと言ってくれました。そこから、本当の意味で信頼し合える組織へと生まれ変わっていきました。
“「相手である社員の人生にとって、本当に幸せにつながる選択なのか」という一点です。”
売上よりも守りたい、目の前の「人」と向き合うこと
Q.売上や成長よりも優先して守っているもの、経営において大切にしている考え方を教えてください。
売上や事業の拡大よりも優先して守っているのは、目の前の「人」と「いちいち向き合う」ことです。
業務効率や目先の成果を求めすぎると、人の感情や小さな変化への配慮が、どうしても後回しになりがちです。
しかし、一人ひとりの強みや良いところを根気強く見つけ、その人が活きる役割をつくることが、人が自信を持ち、輝いていくことにつながると確信しています。
相手を自分たちにとって都合よく使うのではなく、「相手の人生にとって、本当の成長や幸せにつながるか」という“愛”を基準に接し続けること。この人間味のある泥臭い対話と、信頼関係を築いていくことを何よりも大切にしています。
“目の前の「人」と「いちいち向き合う」ことです。”
泥臭さとアナログな人間味——絶対に譲れない価値
Q.「この会社だからこそ」と思う強みや、他社と比べても絶対に譲れない価値は何ですか?
強みは、スマートで先進的な手法ではなく、「いちいち向き合う」という圧倒的な泥臭さと、アナログな人間味です。
一人ひとりの小さな変化や、その人が輝ける強みを丁寧に見つけ出し、自信へとつなげていく育成ノウハウを持っています。
絶対に譲れないのは、効率を優先するあまり「人を都合よく扱わないこと」です。
表面的なスキル磨きやノウハウの提供にとどまらず、覚悟を持った誠実な対話を通じて、一人ひとりが持つ可能性を最大限に引き出し、その人自身が心から輝けるようにする。
そこが、私たちの真骨頂だと思っています。
“絶対に譲れないのは、効率を優先するあまり「人を都合よく扱わないこと」です。”
町工場の社長さんたちと、戻ってきてくれた社員たちへの感謝
Q.これまでの経営人生で一番感謝している人と、その理由を教えてください。
一番感謝しているのは、「独立初期に突撃インタビューを温かく受け入れてくれた地元の町工場の社長さんたち」と、「一度は解雇を告げながらも、再びついてきてくれた社員たち」です。
知識もなかった僕に嫌な顔ひとつせず、経営のことや感謝の伝え方を教えてくれた町工場の社長さんたちがいたからこそ、経営者としての土台をつくることができました。
そして、未熟だった自分の覚悟を受け止め、「この社長と仕事がしたい」と戻ってきてくれた社員たちがいたからこそ、本当の「愛」と「人を大切にする」ということの意味を知ることができました。
どちらとの出会いも、今の僕にとって大切な原点です。
“どちらとの出会いも、今の僕にとって大切な原点です。”
人手不足の本質は「今いる人をどう輝かせるか」
Q.人手不足など「人」に関する課題について、現在感じていることや、取り組んでいることがあれば教えてください。
少子高齢化による人手不足が叫ばれる中、「良い人材が集まらない」と悩む企業は多くあります。
しかし、問題の本質は採用だけではなく、「今いる人をどう輝かせるか」にもあると感じています。
採用難にとらわれる前に、まずは目の前の社員と「いちいち向き合い」、得意なことや個性を丁寧に見つけていく。
弱みを責めるのではなく、その人が輝ける役割をつくることで、人は自信を持ち、社内も活性化していきます。そして、自ら考え行動できる「人財」へと成長していく。
新しい人を採用することだけではなく、「人が育ち、輝ける環境をつくること」も、人手不足という課題を解決していくうえで非常に大切だと考えています。
“問題の本質は採用だけではなく、「今いる人をどう輝かせるか」にもあると感じています。”
10年後、誰にでも「輝ける場所」がある社会へ
Q.10年後、会社や社会・地域がどのようになっていたら「成功」だと思いますか?そのために必要なことは何ですか?
10年後、どんな人にも自分の「輝ける場所」があり、互いの得意・不得意を受け入れながら助け合える社会や地域が広がっていたら、それが私にとっての「成功」です。
企業が目の前の人を「人財」へと育て、誰もが自分らしく、活き活きと働ける環境が当たり前になる世界を目指しています。
そのために必要なのは、効率や数字だけを追い求める経営ではなく、一人ひとりと「いちいち向き合う」教育・育成の文化を、一社でも多くの企業に根付かせることです。
経営者自身が、誠意と愛を持って人に向き合う覚悟を持ち続けること。それが、地域や社会の豊かな未来につながっていくと考えています。
“どんな人にも自分の「輝ける場所」があり、互いの得意・不得意を受け入れながら助け合える社会や地域が広がっていたら、それが私にとっての「成功」です。”
あなたがあなたらしく輝ける場所は、必ずある
Q.社員・お客様・これから出会う人たち、そして未来の読者へ伝えたいメッセージをお願いします。
どんな人にも、必ずその人にしかない“輝ける魅力”や強みがあります。
自分を諦めないでほしい。そして、目の前にいる人のことも諦めないでほしいと思います。
効率やスマートさが求められる時代だからこそ、不器用でも「いちいち愚直に向き合う」ことの価値を、私は信じています。
私自身、不器用で遠回りをしながら、多くの人の温かさと“本当の愛”に救われ、ここまで来ることができました。
人が人らしく輝き、互いを認め合える温かい世界を、一緒につくっていきたい。
あなたがあなたらしく輝ける場所は、必ずあります。
“あなたがあなたらしく輝ける場所は、必ずあります。”