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愛知県食品製造業

株式会社FORRISE

代表取締役 柳 賢一

感謝の心でお預かりした命を、余すことなく届ける

株式会社FORRISE 代表取締役 柳 賢一

お肉との出会いと、人生の転機

ー様々な活動をされていますが中でも食肉卸事業を始めたきっかけを教えてください。

食に関する問題で、これまでいろいろなお米の相談をいただく機会がありました。その中で、今回は畜産バイヤ-の方とのご縁がありまして、それがきっかけで始めることになりました。実際に畜産農家さんや生産者さんと関わる中で、104年余りにわたって3代続く精肉業を担われている方とのご縁もできました。その方々と関わる中で、私自身も「このバトンをつないでいくことには大きな意義がある」と強く感じるようになりました。今回は、お肉との出会いがきっかけです。そこから、経営や事業承継をしていく決意に至りました。

ーこれまでの人生の中で、大きな転機となった出来事は何ですか。

いろいろな仕事に関わってきましたが、人生において大きな転機だったと思うのは、行政側の立場を経験したことです。愛知県岡崎市で、一度政治の道に入り、地域会議員を務めたことがありました。それまでは民間の立場で物事を見ることが多かったのですが、その経験を通じて、民間だけではなく行政的な立場を知ることができました。そこは、自分の人生において大きなターニングポイントだったと思っています。

ーその経験は、現在の経営にどのように影響していますか。

会社を残していくためには、民間企業として利益を追求しなければいけません。事業を続けていくためにも、それは必要なことです。ただ、その経験の中で、「誰一人取り残さない」という考え方を学びました。一番困っている方、弱い立場にある方と共に生きるという目線です。一人勝ちを目指すのではなく、どうやってみんなで共生していくか。共に生きていくか。そういう観点が、自分の中に備わったのではないかと思っています。

「このバトンをつないでいくことには大きな意義がある」と強く感じるようになりました。

過去はすべて「おかげさま」に変える

ーこれまで嬉しかった出来事や、苦しかった出来事については、どのように受け止めていますか。

正直に言うと、「これが一番嬉しかった」とか「これが一番苦しかった」と言えるものは、ないと言えばないのかもしれません。もちろん、瞬間的には嫌なことや苦しいことを感じることはあります。ただ、それをすべて「おかげさま」に変えたいと思っています。嫌なことは、おかげさまの種として、良い話にして話したい。過去は良い物語に変えるものだと思っています。だから、苦しかったことも、振り返れば「おかげさま」なのだと思います。答えになっているか分かりませんが、私はそういうふうに受け止めています。

ー苦難を乗り越えるときに、大切にしてきた考え方はありますか。

苦しみや困難があったときに、そこから目を背けるのではなく、どうすれば良い物語に変えられるかを考えてきました。私は、「過去は変えられるけれど、未来だけを変えることはできない」という生き方が好きです。多くの人は逆に考えがちですが、未来は今の連続だと思っています。「明日からダイエットする」というのは、私はないと思っています。今思ったこと、今の強い考え方の連続が将来をつくっていく。だから大事なのは、今どうするかです。過去はすべて「おかげさま」に変換していく。そうやって乗り越えてきました。

過去は良い物語に変えるものだと思っています。

心を温かきは万能なり——師との出会いと原点

ー経営人生の中で、影響を受けた人物はいますか。

ヒップホップダンスアカデミーを経営されている、フージー・オーナーという方がいます。私にとっては師匠であり、心の師匠のような存在です。その方は、ピンチをチャンスに変えることを体現している人です。人間関係、経済、健康面など、あらゆる苦難を抱えている人に対して、無償の愛で助けていく。そして助けたら、もう二度と会わない。そういう生活を30年以上続けている、助け人間の達人のような方です。私自身も、その方を目指して生きているようなところがあります。

ーその方から、どのようなことを学びましたか。

「心を温かきは万能なり」という精神です。人の痛みが分かる人間になることの必要性を学びました。人と出会うということは、それ自体に縁があるということです。その一期一会に対して、無償の愛で向き合う。人間関係でも、経済面でも、健康面でも、皆さん何かしら苦しまれるときがあります。そのときに、こちらからアドバイスをしないことが、真のアドバイスである。そういう精神を学びました。全力で寄り添い、そっと手を差し伸べる。そして、ご本人の足で半歩進んでもらう。それこそが、寄り添って、アドバイスをしないことが真のアドバイスであり、一番学んだことです。

ー子どもの頃は、どのような性格でしたか。

二人兄弟で弟がいるのですが、もともとの性格としては、本当は部屋の隅で一人で本を読んだり、静かにつつましく暮らしたりすることが好きだったと思います。ただ、家庭環境が複雑で、幼少期から高校までに、関西地区で14回、引っ越しと転校を繰り返しました。そういう経験をする中で、関西独特の風土もあり、お笑い的なユーモアがあるか、喧嘩が強いか、力自慢であるか。そうでないと生き残れないような環境もありました。その結果、自分でも想像していなかった自分になっていった感覚があります。本当は一人で静かに過ごすことが好きだったのに、人と関わることが好きでなければ生き残れないような境遇になっていました。今では、人と会うことが大好きになっています。幼少期の自分とは、きっと全然違うと思います。

ー今の仕事につながる原点はありますか。

人を喜ばせて仕事をし、お金を稼ぐことが好きになったことは、今の根幹につながっていると思います。もともとは、障がい者スポーツの教員を目指していました。それがうまく進まなくて、今でも福祉的就労、つまり障がいがあってもあらゆる仕事ができるというところに寄り添うことは続けています。「働きを楽にして働く」と言いますか、出会えた方の周りの人が、働いて喜んでいく姿を見ることが、自分の根幹にあります。人から何かをもらうと言われることもありますが、人に少しでも与えると元気になる法則がある気がしています。動けるのであれば、歩いてポスティングをすることでも、何かを手配りすることでもいい。自分のできることで人を楽にしていく。そのことによって、自分も健康になっていくような感覚があります。それをやらせるのではなく、伴走して一緒に働きを楽にしていくことが、自分の根幹にある考え方です。

「心を温かきは万能なり」。人の痛みが分かる人間になることの必要性を学びました。

生産者を守り、社員を第一に——理念と信念

ー会社として、最も大切にしている理念は何ですか。

今回、お肉の事業に携わっていく中で、一番大事にしたいのは生産者です。実際に、そこを大切にしています。精肉店や焼肉店は日本中にたくさんあります。ただ、生産者がなかなか継承されていないという課題があります。牛で言えば、当然、糞も出ますし、匂いも出ます。匂いが出ないような取り組みも出てきてはいますが、多くの場合、近隣の方に嫌がられたり、息子さんやお孫さんが継承できなかったりする問題があります。だからこそ、日本の畜産者、生産者を守ることに、私は一番重きを置いています。

ー社員と接するうえで大切にしていることは何ですか。

距離感と風通しです。組織である以上、役割や立場はあります。偉い、偉くないという話ではありませんが、どうしてもピラミッド状の組織図は必要です。そうしないと、組織としてまとまっていかない部分もあります。ただ、その中でも、トップとの距離が近いことを目指しています。大企業になればなるほど部署が増えていき、社長に会ったことがないということも起こります。実際に働いている方と、トップとの距離が遠くなっていく。私は、実際に働いている方、今回で言えば生産者さん、農業であれば農場の方など、一番現場で担っている方との距離感をできるだけ近くしたいと思っています。触れられるぐらいの距離を目指しています。

ー経営判断をする際に、大切にしている価値観は何ですか。

最終的に決断するのは自分です。ただ、その間にクッションを挟むことを大切にしています。そのクッションというのは、知恵者であったり、顧問であったり、士業の先生であったりします。しっかりと耳を大きくして、判断材料を増やしたうえで決断するようにしています。そして、速度感を持って決めることも大事です。そのためには、自分自身の健康や心の豊かさも必要です。日常から、自分の意思決定ができる環境を整えておくことを大切にしています。判断基準となる方にボールを投げ、受け取り、確認し、急ぎ、決断する。そういう感覚を持っています。大切なのは速さですね。

ーこの仕事の一番の魅力は何ですか。

直接、感謝の声を耳にできることです。今回は食肉卸事業ですが、焼肉店にも関わっています。実際に召し上がっていただいた方から、「美味しかったです」「この価格でこんな良いお肉を食べられて最高でした」と言っていただける。その笑顔が、本当に原動力になります。先ほどから大事にしている、トップと実際に働く方との距離感もそうですが、お客様との距離感も近い方が良いと思っています。実体のある感謝。それが何よりのやりがいです。

ー経営者として、絶対に曲げない信念はありますか。

社員や身内を第一にすることです。お客様は第一ではなく、第二、第三です。大変恐縮ではありますが、一番は、一緒に肩を楽にし合える仲間です。家族と同じように、社員と肩を並べていく。社員第一というところが、最大の経営だと思っています。

日本の畜産者、生産者を守ることに、私は一番重きを置いています。

命を扱う仕事——主力商品とこだわり

ー事業を一言で表すと、どのような会社でしょうか。

一言で言うと、命を扱う仕事です。私たちは、感謝の心でお預かりした和牛を、一頭買いで扱っています。余すことなく、感謝の心で召し上がっていただき、その感謝でまた返していく。そういう仕事ですので、やはり「命」だと思っています。

ー主力商品やサービスについて教えてください。

主力商品はお肉です。ランクとしては、A5ランクの中でも12等級あるうちの10、11、12という、最上位のランクのものを取り扱っています。卸として全国に展開していますが、今は海外にも力を入れています。日本の和牛を、適正な方法で喜んでいただける国を増やしている段階です。海外では、食べない部位も多くあります。そうした部位は国内で流通させたり、自社の焼肉店で召し上がっていただいたりして、何一つ無駄にしない取り組みをしています。命を大事にするという考えのもと、A5ランクのお肉をお安く提供できることも、サービスの一つだと思っています。

ー御社ならではの強みは何ですか。

大きくは、海外へ流通させるために日本中の生産者さんとつながっていることです。美味しい和牛を扱ううえで、部位ごとに輸出の認証が必要だったり、さまざまな取り組みが必要だったりしますが、そうした部分をほぼ網羅しています。そのため、海外へ適正に出すことができます。国内についても、品川プリンスホテルさんをはじめ、皆さんがご存じの有名なホテル様にもご採用いただいています。そうしたお墨付きを増やしながら、海外でも国内でもネットワークを広げているところが強みになっています。

ー長年培ってきた技術を持つ方もいらっしゃるのでしょうか。

はい、います。愛知県の岡崎・安城を中心に、3代にわたって精肉業を担ってこられた方がいます。その方は、おそらく日本でも珍しい存在だと思います。今は機械化、オートメーション化が進んでいて、牛一頭の解体も人の手だけで行うことは少なくなっています。その中で、私たちには3代にわたり、手作業で一からできる現役の代表がいます。肉を手作業で牛ごと捌ける人間がいるということは、まさに牛の中身を知ることができるということです。そこは大きな強みだと思っています。

一言で言うと、命を扱う仕事です。

仕入れから店舗まで——FORRISEならではの強み

ー主なお客様は、どのような企業や業界ですか。

海外については、商社様を通して、さまざまな飲食店へ卸す形が多いです。国内についても同様に、卸業が多くなっています。飲食店はもちろん、中間業者さんがお肉を加工して提供する必要があるので、そこに対するスキームづくりも行っています。最近では、それでも余ってくる部位がもったいないという思いから、一般のお客様へサブスクで届けたり、ECサイトを通じて美味しい和牛、本当の味を知っていただくための準備もしています。これまでは卸が中心で、B2Bが軸でしたが、今後はB2Cにも力を入れています。愛知県岡崎市には焼肉店もありますので、実際のクオリティを感じていただきながら、課題を見出しているところです。

ー同業他社と比べたときの強みはどこにありますか。

端的に言うと、牛一頭を、多いときには60頭ほどまとめて買うこともありますので、そこにスケールメリットがあります。加えて、流通網です。私自身もいろいろな国とパイプを作ってきたところがあり、独自のルートを確保してきています。質の高さを維持するために、日本中の生産者さんとつながり、これまで担われてきたものを継承しながら、海外への流通網を増やしています。実店舗の焼肉店もあり、精肉店もある。仕入れから流通、店舗までをセットで行っているところが強みだと思っています。

ーお客様からよく言われる評価はありますか。

端的に言うと、「断らない」ということです。キャパシティの問題で、牛がどれだけ必要か、どれだけ捌けるかという問題は、どこでも起こります。ただ、私たちは全部承り、何とか仕入れて間に合わせ、必ず届けるということを大切にしています。牛を買って、必ず届ける。そうした日本的な精神を持って取り組んでいるところが、強みだと思っています。

ー特に得意としている仕事や案件はありますか。

皆さんが定義しないような、マニアックな業界や人間が、私は大好きです。自分の苗字である柳に肉をつけて、「肉柳賢一」としていろいろなところに配っているんです。笑うところなのですが、そうやって誰も取引できなかったホテルや飲食店に、どう切り込んでいくのかを考えることが好きです。切り込めるかどうかというところに、自分の強みがあるのではないかと思っています。

牛を買って、必ず届ける。そうした日本的な精神を持って取り組んでいるところが、強みだと思っています。

「もったいない」をなくす——これからの挑戦

ー今後は、どのような企業と協力していきたいですか。

現在進行形ではありますが、ホールディングスやグループ化している多業種とのコラボを、楽しく増やしていきたいと思っています。例えば、パチンコチェーン店さんや介護グループなど、もともとのグループや母体があるところに、うまく流通できる手段をつくっていくことです。介護であれば、ご老人の方がどういったものを召し上がれるのかというところがあります。実はお肉は、とても良い食材だと考えています。塩だけで食べると、お肉の脂は決して太るものではなく、健康食品としても見られる部分があります。タレをつけたり、白いご飯やお酒と一緒に食べたりすることで太ってしまうことはありますが、素材としての良さがあります。そうした食育を届けていくためにも、介護など他のグループ会社とのコラボ、多業種との掛け合わせを広げていきたいと思っています。

ー具体的には、どのようなパートナーを求めていますか。

質の良い肉を探し、良いルートを目指して活動している中で、求めているパートナーは、まず知ってもらうこと、周知することに関わってくださる方です。

今回のように取材していただくこともありがたいですし、SNSや口コミの力をどう活用していくかも大切だと思っています。今は模索中ではありますが、美味しい本物の味や質を、どう届けていくか。そのことに伴走してくださる方を探しています。

ーパートナー企業に提供できる強みは何ですか。

牛に絞ってお話しすると、一頭丸ごと買うことで利益率が上がります。パートナー企業様と一緒に仕入れる量が増えれば、商売としてもメリットが出てきます。一例を挙げますと、お肉に目が行きがちですが、実は内臓やホルモンの部分も非常に人気があり、栄養価もあります。質の良い牛、大きな個体を買えば買うほど、内臓やホルモンの量も増えます。その分、利益率が上がるという法則があります。もともと一頭買いをたくさんしている会社だからこそ、パートナー企業様とどう共同で経営していくのか、どう良い関係をつくっていくのかを考えることができます。良いものを大きく買えば買うほど、よりメリットを出せる。その部分を、ビジネスパートナーの方にもご恩返しできるのではないかと思っています。

ー今後チャレンジしたい新しい事業はありますか。

実体験の上で、ピンチはチャンスだと思っています。今携わっている事業で、調子の悪いものや、足踏みしているもの、苦しんでいるものがあれば、ぜひ私に振っていただきたいと思っています。そこから、自分が持っている武器やカードを掛け合わせて、仕事にしていきたいという思いがあります。私は、人の痛みが分かる人間を目指している企業でありたいと思っています。まずは、相談を受けられるような新しいビジネスを目指したいです。「良いサービスですのでどうですか」というプレゼンには、正直、興味がありません。本当は世に出るべきなのに、技術はあるのに、周知されていない。そういうキラリと光る原石が大好きです。そういう方は、高齢の方であることも多いです。何とか自分とつながっていただいて、そのきっかけをつくりたい。駆け込み寺のような存在を目指しています。次にやる事業体としては、カテゴリーを絞らずに、困っているシリーズを受け負えるような事業を目指していきたいと思っています。

ー最後に、読者に伝えたいことをお願いします。

私たちが扱っているのは、命です。感謝の心でお預かりした和牛を、余すことなく召し上がっていただき、その感謝をまた返していく。そこには、生産者さんを守ること、働く仲間を大切にすること、お客様の声を直接受け取ること、そして困っている人に寄り添うことがつながっています。一頭買いという形も、海外への流通も、焼肉店で直接召し上がっていただくことも、すべては「もったいない」をなくし、命を大切に扱うための取り組みです。これからも、生産者さん、社員、パートナー企業様、そしてお客様との距離をできるだけ近く保ちながら、本当に良いものを必要としている方へ届けていきたいと思っています。困っていることや、まだ世に出ていない良いものがあれば、そこに寄り添い、一緒に形にしていく。そうした存在を目指していきます。

本当は世に出るべきなのに、技術はあるのに、周知されていない。そういうキラリと光る原石が大好きです。

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