Herb膳Eva
代表 日下 江利子
我慢する食事ではなく、唸るほどの美味しさを——酒粕とハーブが支える、忙しい現代人の日常の調味料

「本当に安心できる食」とは——事業の原点
Q.現在の事業について教えてください。
現在は、ヴィーガン食品として、安全な食を追求したマヨネーズ状、コンソメ状、クリームチーズ状の調味料を開発・販売しています。こうした商品を通じて、世の中の皆さんの健康に貢献できたらという思いから、この事業を立ち上げました。
具体的には、酒粕が持つ発酵の力とうま味を生かし、そこにオーガニックハーブを融合させた、プレミアムな無添加機能性調味料のブランド「Herb膳Eva」を製造・販売しています。
目指しているのは、我慢して食べる制限食ではなく、一流のシェフや食通の方にも唸っていただけるような美味しさです。忙しいビジネスパーソンや現代を生きる皆さんの胃腸にやさしく、毎日の活力を支える「日常の調味料」として使っていただけたらと思っています。
Q.なぜ、食に関する事業を始めようと思ったのでしょうか。
世の中には、食の安全という面で疑問を感じる食品があふれていて、健康への影響を不安に感じている人もいるのではないかと、ずっと気になっていました。
コストや利便性が優先され、原材料への配慮が見えにくい食品や、添加物に頼った食品が多くある現実を、できれば見たくないという気持ちもあります。しかし、その現実から目を背けているだけでは何も変わりません。
だからこそ、自分は、本当に安心できる食とは何かに向き合い、体に良いものを世の中へ発信したいと思いました。それが、この事業を始めた大きな理由です。
“その時に、「誰かを待つのではなく、私がやろう」と思ったんです。”
「誰かを待つのではなく、私がやろう」——起業の決意
Q.起業を決意するまでには、どのような経験があったのでしょうか。
私は3人の子どもを育てる中で、さまざまなお母さんたちと出会ってきました。
その中には、重いアレルギーを持つお子さんを育てている方もいました。「子どもに食べさせられるものがない」と嘆いていたり、子どもが病気になったことや、体が小さいことまで、自分のせいではないかと責めていたりする姿をたくさん見てきました。
私自身も、卵を食べることができないアレルギーがあります。自分が食の制限を経験しているからこそ、食べられない人の苦しさや、家族の大変さを身近に感じてきました。
食の安全を追求していくうちに、世の中にはこうした商品を待っている人がたくさんいるのではないかと思うようになりました。
その時に、「誰かを待つのではなく、私がやろう」と思ったんです。それが、起業を決意した理由です。
Q.ご自身のアレルギーも、現在の事業につながっているのですね。
そうですね。私は小さい頃からアトピー性皮膚炎があり、卵を食べることができませんでした。さらに、自分の子どもも、夜になると「かゆい、かゆい。かいて、かいて」と言って眠れない日々が続いたことがあります。
かゆくて眠れない本人もつらいですし、それをそばで見ている家族もつらい。世の中には、同じような思いをしている人がたくさんいると思います。
そうした人たちに対して、少しでも安心や選択肢を届けることができたらという思いが、今の事業の原点にあります。
Q.起業する前は、どのような仕事をされていたのでしょうか。
取材時は他業務との兼務体制でしたが、2026年8月に「日下無双発酵本舗 合同会社」として法人設立を完了いたしました。現在は退路を断ち、代表専任体制へと一本化して本事業に100%専念しております。
“ただ健康のために我慢して食べるのではなく、美味しく食べているうちに自然と健康につながっていく。”
酒粕との出会い——「これで世の中の人を救えるかもしれない」
Q.商品開発につながったきっかけを教えてください。
もともと料理が好きで、デパ地下に並ぶような料理を、自分なりに再現することが得意です。
私自身がアレルギーを持っていることもあり、普段から安全な食を求めながら料理をしていました。その中で、ある時、酒粕が持つ特徴や可能性に気づいたんです。
そこから酒粕について研究を重ねました。そして、酒粕を使うことで、卵を使わずにマヨネーズのようなものが作れることが分かりました。
実際に形になった時、「これで世の中の人を救えるかもしれない」と本気で思いました。美味しさを楽しみながら、食の制限を抱える人にも使ってもらえるものができた。その瞬間が、本格的に事業を始める覚悟につながりました。
Q.起業することを周囲に伝えた時、どのような反応がありましたか。
近しい人たちは、思っていたよりも大きな反応ではありませんでした。もっと何か反応してくれるのかなと思っていたのですが、強く反対するわけでもなく、積極的に手を貸してくれるわけでもなく、「自由にやってください」というような雰囲気でした。
ただ、こういうものを作ることにしたと伝えて、実際に商品を送った時には、その美味しさに驚いてくれました。とても感謝してもらえたことは、うれしかったですね。
“一番大切にしているのは、原材料に1ミリも妥協しないことです。”
理想と現実のギャップ、そして支えになったもの
Q.実際に事業を始めてから、想像とのギャップはありましたか。
ありました。私は料理が好きで、健康にも興味があり、世の中に貢献したいという思いから事業を始めました。しかし、実際に始めてみると、料理や商品開発だけをしていればいいわけではありません。
法律や税務をはじめ、さまざまな規定があります。それらに一つひとつ対応しなければならず、事務面の複雑さや煩雑さには、想像していた以上のギャップを感じています。
商品を作ることと、事業として運営していくことは違います。美味しいものを作る力だけではなく、それを正しく販売するために必要なことにも向き合わなければならないと実感しています。
Q.すべてを投げ出したくなったこともあったのでしょうか。
正直に言うと、すべてを投げ出したくなった時もありました。思いだけで事業が成り立つわけではありませんし、採算を度外視して世の中に貢献することについて、思い悩むこともたくさんあります。
私はタロットカードが好きで、自分でカードを見ることがあるのですが、苦しい時に出てきたカードから、「待っている人がいるよ」「苦しんでいる人がいるよ」「あなたを待っているよ」というメッセージを感じました。
それを見た時に、やっぱりやめられないと思いました。実際に、食の制限やアレルギーで困っている人はいます。そうした人たちの存在を思うと、自分の都合だけで簡単に投げ出すことはできませんでした。
Q.なぜ、そこまで頑張ることができるのでしょうか。
採算を度外視してでも世の中に貢献したいと考えることに、迷いがないわけではありません。思い悩むことはたくさんあります。
ただ、自分の人生も、あと何十年あるか分かりません。だから、死ぬ前に「何かをやって死のう」と思いました。
何もしないまま終わるのではなく、自分が経験してきたことや、自分にできることを使って、誰かの役に立つものを残したい。その思いが、今の挑戦を支えています。
“私が人生をかけて伝えたいのは、「食の安全と、自分の体の中に入れるものを大事にしましょう」ということです。”
我慢ではなく、唸るほどの美味しさを——1ミリも妥協しない職人魂
Q.仕事をする上で、特に大切にしていることは何ですか。
一番大切にしているのは、原材料に1ミリも妥協しないことです。無添加を貫くことはもちろん、味や機能性についても一切妥協したくありません。
体に良いものを作ったとしても、美味しくなければ続けてもらうことは難しいと思います。反対に、美味しくても、原材料や安全性に納得できなければ、私が作る意味がありません。
安全性と美味しさのどちらかを選ぶのではなく、両方を追求する。そのために、1ミリも妥協しない職人魂を大切にしています。
Q.ご自身の強みは、どのようなところにあると思いますか。
デパ地下や高級ホテルのビュッフェに並んでいるような料理であれば、自分で再現することができます。
私の強みは、味覚と調理の技術に加えて、発酵科学とハーブの薬理を融合させられることだと思っています。
ただ健康のために我慢して食べるのではなく、美味しく食べているうちに自然と健康につながっていく。そのような仕組みを商品として生み出す開発力が、自分の強みです。
目指しているのは、一流シェフや食通の方にも唸っていただける圧倒的な美味しさと、体へのやさしさの両立です。私たちはこれを「Epicurean & Gentle」と呼んでいます。制限食だから仕方がない、という妥協は一切したくありません。
“食の制限を抱えるお子様やご家族はもちろん、多忙な現代を戦うビジネスパーソンからも「身体が軽くなった、美味しくて感動した」と喜んでいただける食卓を創りたい。”
「信長」「秀吉」「家康」——体の中を平定する調味料
Q.Herb膳Evaの商品には、どのような特徴がありますか。
発酵という自然の力と、クリーンラベル、無添加、厳選した原材料を大切にしている点です。
植物性100%でありながら、プロのシェフにも評価していただけるようなうま味を目指しています。また、冷凍・解凍後も分離しにくいことを確認するなど、検証を重ねている点も特徴です。
植物性であることや無添加であることだけを理由に、美味しさや使いやすさを諦めるのではなく、日常の料理に取り入れやすく、満足して食べられるものを作ることを大切にしています。
Q.商品には「信長」「秀吉」「家康」という名前が付けられているのですね。
「信長」は、卵や化学調味料を一切使っていない、プレミアム酒粕マヨクリームです。「秀吉」は、化学調味料を使っていないコンソメ状の調味料、「家康」は乳製品を使っていないクリームチーズ状の調味料です。
信長、秀吉、家康は、戦国の世を治めるために歩んだ人物として知られています。今の世の中は、かつてのように乱れているわけではないかもしれません。しかし、現代では、自分の体の中が乱れている人が多いのではないかと感じています。
だから、「信長」「秀吉」「家康」を食事に取り入れることで、自分の体の中を平定してもらえたら、という思いを込めています。
私が人生をかけて伝えたいのは、「食の安全と、自分の体の中に入れるものを大事にしましょう」ということです。
忙しい現代人の「日常の調味料」——やりがいと、生まれる会話
Q.現代の食生活について、どのようなことを感じていますか。
今は働き手が不足していて、女性も若い人たちも、子育てをしながら働いています。皆さん本当に忙しく、その分、手軽に食事を済ませられる選択肢も増えています。
外食で済ませることもできますし、買ってきたものを食卓に並べることもできます。それ自体が悪いということではありませんが、忙しさの中で食が乱れ、知らず知らずのうちに健康を損ねている人もいるのではないかと心配しています。
だからこそ、忙しいビジネスパーソンや現代人が、つけるだけ、混ぜるだけで、胃腸をいたわりながら美味しく食べられる「日常の調味料」を作りたいと思いました。
手間をかけなければ健康的な食事ができないのではなく、忙しい人でも簡単に取り入れられるものにする。そうすることで、今の暮らしに合った形で食の安全を届けられるのではないかと考えています。
Q.どのような瞬間に、仕事のやりがいを感じますか。
新しい商品ができた時に、実際に食べて「本当に美味しい」と思えた瞬間です。健康に良いものを目指して開発していても、食べた時に心から美味しいと思えなければ、私は納得できません。
なので、つけるだけ、混ぜるだけで、美味しく食べられて、健康についても考えられるものを生み出せた時には、大きなやりがいを感じます。自分自身が「本当に美味しい」と思えるものを作れた喜びは、商品開発を続ける力になっています。
Q.食を通して、人と人との関わりにもつなげたいという思いがありますか。
あります。今は、スマートフォンを見ながら食事をすることも増え、家族団らんの時間が少なくなってきているように感じます。
外食や買ってきたもので食事を済ませることはできます。ただ、食卓を囲む時間は、単に栄養を取るだけの時間ではありません。
安全なものを囲み、家族や大切な人と一緒に「美味しいね」と言いながら食べる。その時間を通じて、みんなが健康になれたらいいと思っています。
商品を販売することだけではなく、食卓に会話が生まれ、人と人がつながるきっかけになってほしいという思いもあります。
Q.以前は、お弁当も作っていたそうですね。
もともと料理が好きだったことから、「お弁当を作ってほしい」という依頼を受け、体に良いものだけを入れたお弁当を作っていたことがあります。
ただ、お弁当の場合、そのお弁当を実際に食べた人にしか届けることができません。日本全国には、アレルギーを持つ方や、健康になりたいと考えている方がたくさんいます。そうした人たちに、より広く商品を届けたいと考え、ECサイトで調味料を販売する形へとつながりました。
調味料であれば、それぞれの家庭で普段の料理に取り入れていただけます。特定の場所で、限られた人に食べてもらうだけではなく、必要としている人のもとへ広く届けることができると考えています。
世界の食卓へ——食のパラダイムシフトを起こす
Q.今後、どのようなことに挑戦していきたいですか。
まずは、自分の家族や子どもたちを健康にしたい。そして、日本人を健康にしたいと思っています。
さらにその先には、世界中の皆さんに、日本古来の伝統的な発酵食を通じて健康になってもらいたいという思いがあります。
酒粕は、日本で古くから親しまれてきたものです。その酒粕が持つ発酵の力やうま味を、現代の暮らしに取り入れやすい商品にして届けていきたいです。日本だけではなく、世界中の食卓で使ってもらえるものに育てていけたらと思っています。
Q.今後、どのような方々と出会いたいと考えていますか。
本物の品質を求めている百貨店やホテルのバイヤーの方、食の安全に妥協しないファインダイニングのシェフの方々と出会いたいです。
また、商品の品質だけでなく、私たちのブランドの理念にも共感していただける方とつながりたいと思っています。食の安全を大切にし、食の現状をより良いものに変えていくことを一緒に推進してくださるパートナー企業と出会えたらうれしいです。
Q.将来的に実現したい夢や目標を教えてください。
Herb膳Evaの調味料が世界中の食卓に普及することです。
特別なことをしなければ健康を守れないのではなく、日常の食事の中で商品を選ぶことによって、人々が日々の健康を意識し、心身ともに満たされる。そのような食のパラダイムシフトを起こしたいと思っています。
健康のために美味しさを諦めたり、美味しいものを食べるために安全性を諦めたりするのではなく、どちらも大切にできる食を、日常の当たり前にしていきたいです。
Q.人生をかけて救いたいのは、どのような人でしょうか。
食の制限やアレルギーに苦しんでいる人です。食べられるものが限られているために、美味しいものを食べる喜びまで諦めてしまっている人たちに、食べる楽しさを届けたいです。
また、多忙な現代社会の中で食生活が乱れ、知らず知らずのうちに健康を損ねているすべての人にも届けたいと思っています。
忙しいから仕方がない、アレルギーがあるから仕方がないと、美味しい食事や健康を諦める必要はないと思います。食の制限がある人も、忙しい人も、同じ食卓を囲み、「美味しい」と言えるものを作り続けたいです。
Q.今の挑戦を10年後に振り返った時、どのような言葉をもらえたらうれしいですか。
食の制限を抱えるお子様やご家族はもちろん、多忙な現代を戦うビジネスパーソンからも、「身体が軽くなった、美味しくて感動した」と喜んでいただけることです。そんな食卓を創りたいと思っています。
私自身のアレルギーや、子どもがかゆみで眠れなかった経験は、この事業の原点です。だからこそ、食の制限がある人も、忙しい毎日を送る人も、世代を問わず誰もが同じ食卓を囲み、「美味しいね」と笑顔になれる。そんな毎日を、商品を通じて届けていきたいです。
食の安全を大切にすること。自分の体の中に入れるものを大切にすること。そして、我慢するのではなく、美味しいものを食べる喜びとともに健康でいること。その思いを、これからも商品を通じて伝えていきたいと思っています。