株式会社ホニック
森上 智代
「ホニックらしい商品を作る」——段ボール検査装置で、現場の信頼に応える

5代目代表へ——事業を継いだ歩み
ーこの事業を始めたきっかけは何でしょうか。
私はホニックの5代目の代表になります。なので、もともとは創業から関わっていたわけではなく、会社としては機械関係の下請けとして制御盤制作をしていたところから始まっています。まず、私が入社した当時は24歳でした。その時はまだ会社としての形が整っておらず、就業規則もなく、制度もほとんど整備されていない状態でした。そこから一般事務員として入り、就業規則を作るところから始めて、福利厚生や社内制度も役員になってから少しずつ整えていったという流れです。そして、3代目の社長に代わられるタイミングで、「自社商品を作っていこう」という方針に変わりました。それで、下請けの単価がかなり下がってしまって、例えば時給でいうと4,000円もらっていたものが1,000円くらいまで落ちてしまうような、そんな状況でした。それもあって「下請けから脱出する」という方向に舵を切ったんです。当時、ちょうど段ボール関係の制御盤を作っていたので、段ボール製造メーカー向けの検査装置を作るという流れになりました。その中で初めて1つ目の特許をいただきました。その特許を軸にして、本当に自社商品を作り出していくということを掲げて進めていったのが始まりです。その3代目の社長が就任されたとき、私も役員になり、そこから19年ほどたち、取締役部長から副社長として会社に関わってきました。その後、4代目の社長がコロナ禍直前に交代されまして、その方を支えていく立場で、自分としてはそのまま終わるつもりでもありました。ただ、その方が一昨年の10月に退任されて、急遽、私がそのまま代表になるという経緯です。なので、代表になってからはまだ1年半ほどですので、「きっかけ」という意味では創業者ではないので難しい部分もあります。実は、今は私が5代目なのですが、代表者全員、縁故関係がなく、全員が社員から代表になっているという、中小企業としては珍しい形で継続している会社となっています。
ー前職は何をされていましたか。
入社前は会計事務所にいました。中学の後輩がその事務所を結婚退職するタイミングで、そこが事務員を探していまして、それまで前の職場が家から遠かったこともあって、そこの事務所は自転車で通える距離でしたので、通勤面も考えて入社しました。ただ、会計事務所自体も大変な仕事で、確定申告や年末調整の時期になると終電に間に合わないようなこともありました。そういう環境と、たまたま後輩がホニックを退職するということがあって、転職したという流れです。
ー事業を継承する決意をした瞬間はありますか。
決意をした時は、役員になった時、36歳くらいだったと思います。その時には何かあっても「最後までこの会社にいよう」という決意はしていました。ただ代表になるかどうかについては、そこまで特別な覚悟がいることではなかったです。というのも、ずっとお金や運営にも関わってきていたので、ある程度の覚悟はすでにできていたからです。ただ本音としては、次の世代にやってほしいという気持ちはありました。しかし役員間での話し合いの中で、どうしてもやりたくないという話になり、結果として私が取締役副社長を、そして代表権は持っていいということになりました。代表権というのは中小企業ではすべての保証をするということが伴うため、そこに対しての社員からの躊躇はあったと思います。そして、代表権を持つことになりましたが、実際にはこれまで銀行とのやり取りや社内的なことも含めてやってきたので、大きな変化という感覚はありませんでした。なので、覚悟は元々あったと思います。社長として必要なのは、計画や行動だけではなく「度胸」だと思っています。
“「ホニックらしい商品を作る」。どこにもないものを作るという考え方を、ずっと会社として持ち続けています。”
人生の転機と、判断の軸
ー人生の中で最も大きな転機は何ですか。
一番ショックだったのは、1年ちょっと前に姉がくも膜下出血で倒れたことです。父が亡くなったり社員が亡くなったりという経験もありますが、姉は一番身近で、友達のような存在だったので、それが一番大きかったです。今も喋れない状態で、3ヶ月間眠ったままの状態でした。それでも、少しずつ回復してきて、今は車椅子に乗れるようになっています。この経験もあって、去年から、社員にも脳ドック検査を導入しました。通常の健康診断では頭の項目がなく、分からない部分が多いので、予防できることは早めにやるべきだと思うようになりました。
ー影響を受けた人物はいますか。
若い頃に影響を受けたのは、中坊公平さんという弁護士の方です。この方の「正面の理、側面の情、背面の恐怖」という言葉がとても印象に残っています。この考え方を軸にして物事を判断するようになりました。例えば旅費精算でも、ルールはルールとして存在するのが正面の理です。ただ現場には事情があり、例えば移動が大変な場合などは宿泊費を出すといった判断が側面の情になります。一方で、その情が行き過ぎて不正が起きることを防ぐのが背面の恐怖です。この3つの考え方は今でも経営判断の基準になっています。
ー子どものころ、どんな性格でしたか。
負けん気が強い子だったと思います。
ーそれが今の仕事に繋がる原点はありますか。
子どもの頃よりは、いくらか穏やかになったと思いますけど、ある程度の負けん気はずっと持ってると思います。
“代表者全員に縁故関係がなく、全員が社員から代表になっている。中小企業としては珍しい形で続いてきた会社です。”
理念と、社員への想い
ー御社が最も大切にしている理念は何ですか。
「ホニックらしい商品を作る」ということです。どこにもないものを作るという考え方はずっと会社として持ち続けています。段ボールの検査装置のように、現場で役立つものを作るということに価値があります。
ー社員に対して大切にしていることは何ですか。
褒めるときは人前で、叱るときは人前では言わないようにしています。基本的には、どうすればできるようになるかを一緒に考えるという姿勢を自分の中でずっと大事にしています。ただし、あまりにも良くないことがあれば、一度立ち止まってから対応するようにしています。
ー経営判断で最も大切にしていることは何ですか。
まずは社員にとってプラスかどうかということです。社員があっての会社なので、そこが一番大事な判断基準だと思っています。
“褒めるときは人前で、叱るときは人前では言わない。どうすればできるようになるかを、一緒に考えます。”
この仕事の魅力——人とのつながり
ーこの仕事の一番の魅力は何ですか。
15年くらい前に求人がすごく厳しい時期があり、その時に初めてベトナムの方々を採用するという方針を取りました。そこからベトナムの方が入社し、最初は独身の方だったのですが、半年ほどで結婚され、その奥様も日本に来ることになりました。そのタイミングで、社員だけではなく奥様も含めて、私自身が日本語教室を週3回行うようになりました。一緒に過ごす中で、奥様たちとも自然と関係が深くなっていきました。さらに、その奥様が出産される際には、母親教室にも一緒に同行するような関係になっていきました。そういった積み重ねの中で、最初に来た方を中心に、次に入ってきたベトナムの方々や他の外国人社員同士が、自然と協力し合う関係ができていきました。奥さんや子どもの面倒をお互いに見合うような形が生まれたことで、最初にあった少しの苦労は、長い目で見れば大きな負担ではなくなっていきました。その結果として、今ではむしろ奥様たちから楽しませてもらうことの方が多くなりました。母の日や私の誕生日の月には、食事会を開いてくれることもあります。その場では本当に、人生でこんなに笑ったことがあっただろうかと思うくらい、50歳を過ぎてから笑うことが増えました。彼女たちが私のことを「お母さん」と呼び、その子どもたちが「おばあちゃん」と呼ぶような関係になっています。それは仕事の枠を超えた、人としてのつながりになっています。だからこれは「代表という仕事の魅力」というよりも、このホニックという会社そのものの魅力だと思っています。
ー経営で曲げない信念はありますか。
基本的な考え方として、先ほど話した「正面の理・側面の情・背面の恐怖」という考え方で判断することは曲げない部分です。そしてもう一つ大事にしているのは、社員を犠牲にしないということです。そこはとても重要だと思っています。その考え方があるからこそ、健康経営にも力を入れています。できるだけ早い段階で変化やリスクに気づき、予防できる形にしていくことが大事だと考えています。
“社員を犠牲にしない。だからこそ、できるだけ早く変化やリスクに気づき、予防できる形にしていくことを大切にしています。”
ホニックの事業と、技術の強み
ー御社の事業を一言で表すと、どんな会社でしょうか。
段ボール製造メーカーに特化して、その製造メーカー向けの検査装置や制御装置などを作っている会社です。段ボール製造の現場で役立つものを提供することに特化しています。
ー商品やサービスについて教えてください。
一番分かりやすいものとしては「AUTOⅡ」という商品があります。ホニックが最初に特許を取った製品で、段ボールの側面を見るとある山、いわゆる凹凸の部分を検査する装置です。「AUTO」というのは自動という意味で、「Ⅱ」はその名称として付けています。よくお客さんに「AUTO1はあるのか」と聞かれるのですが、これは段ボールの「凹凸」部分を見る機械なので「AUTOⅡ」という名前になっています。現在は3代目くらいに進化していて、「New-AUTOⅡ」や「AUTOⅡ-L」などのシリーズがあります。この製品は日本全国の段ボール業界の95%以上に導入されています。段ボールは1分間に300mから400mの速度で流れていき、その工程の中で貼り合わせ前に検査を行い、不良を自動で検出・除去する仕組みです。他にも印刷のズレやカットテープの位置などの、さまざまな検査装置があります。
ー他社にはない御社の強みは何ですか。
技術と知恵の両方があることだと思っています。電気関係の業界は、C言語、画像処理、シーケンスなど、それぞれの専門領域で分かれていることが多いです。ただ当社は、そのどれか一つに偏るのではなく、それぞれの技術を持った人材が集まっている会社です。そのため、一つの商品を作るときにも、最適な方法をその都度選択できます。一般的な会社では「この技術で全部やる」という発想になりがちですが、当社は目的に対して最も適した技術を選びます。そこが大きな違いであり、強みだと思っています。
“50歳を過ぎてから笑うことが増えました。技術だけでなく、人の力も会社の大きな魅力です。”
26件の特許が支える技術力
ー技術やノウハウはありますか。
あります。特許は26件あります。他社が特許申請する際に、当社の特許を参考にしたと記載されることもあるほど、業界の中では先行してきた部分があると思います。
ーどれくらい前に特許を取得しましたか。
最初の「AUTOⅡ」は30年くらい前だったと思います。そこから一つの特許を起点に積み重ねてきました。
ー特許を取るにあたって大変なことはありましたか。
基本的には、現場で出てきたアイデアを形にすることが重要で、いい案だと思えば、すぐまとめてできるだけ特許につなげるようにしています。過去には下請け時代に他社に特許を取られてしまった経験もあったため、新しいアイデアについては弁理士に相談し、調査した上で申請するようにしています。費用としてはそこまで大きな負担ではなく、申請費用は30万円前後です。場合によっては特許の審査官側が勘違いして受け取っていることもあり、その時に補正文書などで数万円〜十数万円かかることもあります。ですが、それはなしで取得までできるときもありますし、特許取得時の成功報酬10万円でやってくれるので、中小企業にとってはとてもありがたい弁理士さんです。
ーホニックはどんな業界の会社ですか。
段ボール製造メーカーの業界です。例えば、王子グループの王子コンテナーや「レンゴー」、日本の主要な段ボールメーカーである「トーモク」「日本トーカンパッケージ」「大和紙器」「森紙業」「大日本パックス」にも製品が導入されています。全国に工場があり、海外にも展開しています。現在はマレーシア、インド、ベトナムなどでも展開が進んでいます。海外は今後さらに増えていく見込みです。
お客様・パートナーとの関係
ーお客様からの評価を教えてください。
「ホニックさんなら大丈夫だよね」と言っていただけることが多いです。初めての検査装置の依頼でも「任せられる」と思ってもらえることは大きいです。実際に導入したお客様からは「性能がすごい」と評価いただくこともあります。他社製品から切り替えた際に、その違いを実感していただくこともあります。
ーどんな企業とつながりたいですか。
機械屋さんと電気工事会社は特に重要なパートナーです。自社だけでは完結できない部分があるため、そこは長年協力していただいている会社との関係が欠かせません。
ー求める技術や企業はありますか。
システムを理解し、一緒に考えてくれる会社と一緒に仕事をしたいと考えています。一方的ではなく、対等に技術者同士が協力できる関係が理想です。
ーパートナー企業に提供できる強みは何ですか。
小さい会社だからこそ、一緒に考え、一緒に作るという姿勢があります。一方的に指示するのではなく、協力しながら進めていくことができます。
健康経営と、これからのビジョン
ー今後のビジョンを教えてください。
1年後は、海外の仕事をしっかりやり切ることで社員に自信を持ってもらうことです。3年後は、新しい社員を受け入れられるくらい会社を強くしたいと考えています。5年、10年後は、今いる社員とこれから入る社員が、事故なく健康に、そしてやりがいを持って働ける会社でありたいと思っています。
ー健康経営優良法人を取得されたきっかけは何ですか。
優良法人ができる前に、すでに会社では健康経営に取り組んでいまして、理由としては、社員が出張で太ってしまい、健康面に課題が出たことがきっかけです。産業医からの指摘もあり、これはまずいと感じて、そこからダイエットしてもらうために、万歩計を使って目標を達成できたら商品券をお渡しする取り組みや、ペアになってダイエットしたらそのペアに商品券を渡すなど、健康施策を始めました。その流れの中で健康優良法人の申請につながり、2017年から継続して認定を受けています。
ー健康経営に取り組んで、社内にどんな変化がありましたか。
健康経営の取り組みが、社内コミュニケーションのツールになっています。部署を越えて話すきっかけになり、社内のつながりが強くなりました。
ー最後に、皆さんへ伝えたいことをお願いします。
ホニックは、技術力と人との関係性を大切にしてきた会社です。下請けから自社商品開発へ挑戦し、段ボール検査装置を全国で展開する技術力を築いてきました。同時に、社員やその家族との日々の関わり、健康経営の取り組みなど、人を大切にする文化を根付かせています。外国籍社員との信頼関係や、社内でのコミュニケーションも活発で、技術だけでなく人の力も会社の大きな魅力です。日々の積み重ねの中で、社員が安心して働き、技術が活かされ、会社として成長してきた、その姿をぜひ感じてほしいと思います。