紀創機械設計
松浦 紀貴
お客様のイメージを超えて、アイデアを形にする機械設計

機械設計という仕事と、起業への決意
ーまず、現在の事業内容について教えてください。
紀創機械設計では、機械設計の中でも、工場にある生産設備や自動化のFA設備、物を運ぶ搬送装置などの設計を行っています。分かりやすく言うと、部品を組み立てたり、組み付けたりするための装置、あるいは物を右から左へ運ぶ、上下させるといった搬送装置を設計しています。製造現場の中で必要とされる設備や装置を、設計という立場から形にしていく仕事です。基本的には、自動車メーカー様や、工場の生産設備を作っている製造業様に向けた仕事になります。
ーなぜ、この事業を始めようと思われたのでしょうか。
私は、機械設計を30年以上続けてきました。その中で、お客様のニーズに応えるためには、まずしっかりヒアリングをして、何を求められているのかを理解することが大切だと感じてきました。また、製造業では設計者不足に悩む企業が多く、これまで培ってきた機械設計の経験を活かすことで、そうした企業の力になれるのではないかと考えたことが、事業を始めた理由です。
ー起業を決意された理由を教えてください。
30年以上、設計を続けてきた中でお客様のニーズに応えていこうという思いから始まっていたんですが、直接的な要因は、当時勤めていた会社での在宅勤務にあります。ロケーションの関係もあってそうした働き方をしていたのですが、それが少し難しくなってきたことで、元々自分の中にあった思いを、自分の形にしてみようと考えました。それが、起業を決意した理由です。
“機械設計は、ものづくりの始まりになる仕事だと思っています。”
30年積み重ねてきた、設計の経験
ー起業前は、どのようなお仕事をされていたのでしょうか。
今と同じく、機械設計の仕事をずっと続けてきました。特に専門としてやってきたのは、自動車業界の設備設計です。そのほか、特殊なものではタンクローリーの設計にも関わってきました。「作ってきた」と言っても、私が担当していたのは主に設計および図面作成の部分です。製造業において設計は、製造業の中でも、ものづくりの出発点になる部分だと思っています。そこから実際の形が生まれていきます。その設計という仕事を、これまでずっと続けてきましたし、これからも続けていきたいと考えています。
ーその経験は、現在の事業にどのようにつながっていますか。
設計をしている中で大切なのは、ただ図面を書くことではありません。お客様の要望がどこまで求められているのかを理解することです。「こういう図面を書いてほしい。」「こういうものが欲しい。」というだけではなく、「こういうところ足りていませんか?」といったことを、構想段階から提案していくことも仕事の一つです。そのためには、お客様の話を聞きながら、どこに課題があるのか、何を求めているのかを理解する必要があります。そうした経験は、今の事業にも活かされていると思います。設計の仕事は、図面として見える形になる前の段階がとても大切です。お客様の頭の中にあるイメージをどう形にするかを考える。これまでの経験の中で、その部分を大切にしてきました。
“お客様が頭の中で描いているものと一致しているか。さらに、そのイメージを上回れるかどうかを大切にしています。”
未知だった営業と、家族の支え
ー起業前に不安だったことはありますか。
一番不安だったのは、継続して仕事を取ってこられるかどうかというところです。ずっと技術畑を歩んできましたので、設計については長く経験してきましたが、営業に関しては未知の世界でした。そこで自分で営業をして、仕事を継続していけるのかという不安はありました。それでも、お客様が困っていることは必ずあると思って、そのニーズを探していくことが大事になってくると感じています。技術の仕事をしていると、どうしても目の前の設計や図面に集中することが多くなります。けれど、起業して自分で事業を進めていく以上、まず知ってもらうこと、そして信頼関係を築いていくことが必要になるので、その部分は、自分にとって新しい挑戦でもあります。
ー実際に始めてみて、感じたギャップはありますか。
大きなギャップというほどの差を感じたわけではありません。ただ、もともと不安に思っていた営業力の部分については、やはり難しさを痛感しています。BtoBの仕事になりますので、信頼関係を築いていくことが大切ですが、その前に、まず紀創機械設計のことを知ってもらう必要があります。そこがとても難しいと、今も実感しています。設計の技術や経験があっても、それを必要としているお客様に届かなければ仕事にはつながりません。だからこそ、技術者としての経験だけでなく、どうすれば知ってもらえるのか、どうすれば信頼してもらえるのかという部分にも向き合っていく必要があると感じています。
ー大変な時に支えになっているものは何ですか。
一番支えになっているのは、やはり家族の存在です。自分が悩んでいる時に、家族が「こうした方がいいんじゃないか」とアドバイスしてくれることがあります。何かを手伝ってくれたり、バックアップしてくれたりすることもあります。個人で仕事をしていると、周囲に意見を求めるタイミングがなかなか掴めないこともあります。そういう時に、身近で話を聞いてくれる存在がいることは大きいです。また、家族のために頑張ろうと思えることも、支えの一つになっています。自分一人で仕事をしているようでいて、実際には家族の支えがあって続けられている部分があると思っています。
“本当に作れるのか、作りやすいのか、メンテナンスしやすいのか。そこまで考えて設計することが、自分の強みです。”
お客様のイメージを超える——大切にしていること
ー仕事をする上で、大切にしていることは何ですか。
図面を正しく描くことは、もちろん大切です。ただ、それだけではありません。お客様がイメージしているものが、まだ全く形になっていない状態のことがあります。その時に、お客様が頭の中で描いているものと、自分が作り上げようとしているものが、まず一致しているかどうかを大切にしています。さらに言えば、そのイメージを上回れるかどうかも大切だと思っています。そのためには、とにかくお客様の話をよく聞くことです。何を求めているのかを、自分の中でしっかり理解することを大切にしています。設計の仕事では、こちらが良いと思っているものと、お客様が本当に求めているものがずれてしまうこともあります。だからこそ、最初の段階で話を聞き、イメージをすり合わせることが重要です。「こういう装置が欲しい。」という言葉の奥には、現場で困っていることや、作業を楽にしたいという思いがある場合もあります。そうした背景まで理解できるように、対話を大切にしています。
ー周りからは、どのような人だと言われますか。
パッと見は怖そうだと、よく言われます。ただ、実際に話してみると、「思っていたより話しやすい。」「気さくに話せる。」と感じてもらえることが多いと思います。その部分は、設計の仕事にも活かしていきたいと考えています。お客様の話をよく聞くためには、話しやすい環境づくりが大切です。機械設計では、難しい言葉もたくさん出てきますので、そうした専門的な内容を、できるだけ分かりやすい言葉に置き換えて伝える努力はしています。設計者だけが分かる言葉で話してしまうと、お客様との間に距離ができてしまいます。お客様が不安なく相談できるように、難しい内容も噛み砕いて伝えることを意識しています。お客様の話をしっかり聞くこと、そしてこちらの考えも分かりやすく伝えること。その積み重ねが、信頼関係につながっていくのだと思います。
“省力化や省人化は、人を減らすためのものではなく、仕事の負担を減らし、誰でも取り組みやすい環境をつくるためのものです。”
アイデアを形にする力——紀創機械設計の強み
ーご自身の強みは、どのようなところにあると思いますか。
アイデアを形にする力は、30年やってきた中で培ってきたものだと思っています。設計の知識だけではなく、これまで経験してきたいろいろな引き出しをもって、それらを組み合わせていくことが経験値だと思っています。特にあるのは、ただ形にするだけではないということです。本当に作れるのか、作りやすいのか、作った後にメンテナンスがしやすいのか。そこまで考えて設計していくことが、自分の強みだと思っています。図面上では形になっていても、実際に作りにくかったり、後からメンテナンスがしにくかったりすると、現場で困ることになります。だからこそ、設計の段階で、作る人や使う人のことまで考えるようにしています。コストダウンや省力化、省人化に対応していくことも、得意としている部分です。作りやすい図面であるか、物が作りやすい図面になっているか、メンテナンスしやすい図面になっているか。そうした点を意識しながら、設計に取り組んでいます。
ー他社とは違うこだわりや特徴はありますか。
基本的に一人でやっているため、設計する製品にばらつきが起きにくいという点があります。複数の作業者が関わることで、どうしても品質にばらつきが出る場合もあります。しかし、一人で一貫して対応することで、設計の考え方や品質に一貫性を持たせることができます。そこは、品質を保証できる一つのポイントだと思っています。もちろん、一人でやることは大変さもあります。ただ、お客様の話を聞くところから設計まで、自分自身が一貫して関われるからこそ、途中で意図がずれにくいという良さもあります。お客様が求めているものを直接聞き、その内容を自分の中で整理し、設計に反映していく。そうした流れを大切にしています。
ー特に得意な仕事や案件は、どのようなものですか。
基本は機械設計ですが、技術面ではコストダウンや省力化、省人化といったものに対応していくことが得意です。あとは、実際に物が作りやすい図面であるか、メンテナンスもしやすい図面であるかというところも強みにしています。設計は、実際に作る人が作りやすいか、使う人が扱いやすいか、後からメンテナンスしやすいか。そうしたことまで考えて設計することが大切だと思っています。現場で使われる装置だからこそ、机の上だけで完結する設計ではなく、実際に使われる場面を考える必要があります。そこに、これまでの経験が活かされていると感じています。
“「誰でもできる」仕事をつくっていきたい。障がいの有無にかかわらず、同じフィールドで働ける——そんなものづくりを目指しています。”
機械設計の可能性を、もっと広い世界へ
ー今後、どのような方にサービスを届けていきたいですか。
基本的には、自動車メーカー様や、工場の生産設備を作っている製造業様が中心になります。そういった現場では、設計リソースが不足しているという話も聞きますので、まずはそうしたお客様に向けて、機械設計の力でお応えしていきたいです。一方で、今後は飲食店などにも対応できるような設計をしていきたいと考えています。飲食業でも、人が減っているという問題があります。機械設計に馴染みがない業界であっても、人手不足に困っているところはあると思います。そうしたところに対しても、製造業で培ってきた技術や経験を活かし、手助けができるのではないかと考えています。機械設計というと、工場や製造業のものというイメージが強いかもしれませんが、省力化や省人化というものは、他の業界でも役立つ可能性があります。今後は、その可能性を広げていきたいです。
ーこれからチャレンジしたいことはありますか。
これから人手不足がさらに進んでいく中で、機械設計に馴染みのない飲食業の方々の手助けもできるのではないかと考えています。そこには、これからチャレンジしていきたいです。また、3Dプリンターなどを活用しながら、製造業で培ってきた技術や経験を形にしていけたらと思っています。これまでの経験を、これまで関わってきた業界だけにとどめるのではなく、別の分野でも活かしていきたいと思っているので、機械設計の力で、困っている人や業界の役に立てる範囲を広げていくことが、これからの挑戦です。
誰もが働ける未来を目指して
ー将来的に実現したい夢や目標はありますか。
機械設計を使って、省人化・省力化を進めていく中で、人の力が必要ない部分を減らしていくことができると思っています。その先に、「誰でもできる」仕事をつくっていきたいという思いがあります。ここで言う「誰でもできる」というのは、障がいのない方だけではありません。障がいのある方でもできる、障がいの有無にかかわらず、同じフィールドで働けるようなものを作っていきたいと考えています。省人化や省力化というと、人を減らすためのものと捉えられることもあるかもしれませんが、自分が考えているのは、仕事の負担を減らしたり、誰でも取り組みやすい環境をつくったりすることです。機械設計によって、作業の難しさや負担を少しでも減らすことができれば、これまでできなかった人にも仕事の可能性が広がるかもしれません。そうしたものづくりを目指していきたいです。
ーここまで走ってくるなかで、時には犠牲にしたものもあると思います。その痛みを抱えても、自身に賭けて救いたい人は、どんな人ですか。
具体的に「これを犠牲にしてきた」という実感は、正直あまりありません。ただ、少なからず何かしらの犠牲は払ってきたのだろうと思います。だからこそ、これからはそうした犠牲をできるだけ最小限にとどめていくためにも、機械設計を通じて、困っているお客様のニーズに応えていきたいと考えています。また、設計業を知らない方、機械設計とあまり縁のない方々の力にもなっていきたいです。たとえば飲食業のようにこれまで機械設計と関わりが少なかった業界でも、困っていることはあると思います。そうした方々を助けていきながら、幅広く役に立てるものを作っていきたいです。さらに、障がいの有無にかかわらず、同じフィールドで活躍できる環境づくりにつながる製品を作っていきたいという思いがあります。自分がこれまで積み重ねてきた機械設計の経験を、製造業だけでなく、困っている人や業界に広げていくために、これからもお客様の話を聞き、何が必要とされているのかを考えながら、形にしていきたいです。
ー最後に、皆さんへ伝えたいことをお願いします。
機械設計は、ものづくりの始まりになる仕事だと思っています。お客様の頭の中にあるイメージや、現場で困っていることを聞き取り、それを図面に落とし込み、実際に作れる形へと近づけていく。その過程をこれまで30年以上続けてきました。大切にしているのは、お客様が何を求めているのかを理解し、そのイメージと自分の設計を一致させることと、その期待を上回れるように考えることです。これからも、お客様を中心に、コストダウンや省力化、省人化、作りやすさやメンテナンスのしやすさを考えた設計で、お客様の困りごとに応えていきたいです。また将来的には、機械設計に馴染みのない業界にも力を届けていきたいと考えています。お客様の話を聞き、一つひとつ形にしていくことをこれからも大切にしていきます。