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愛知県福祉

株式会社ぬくもりの泉

代表取締役 野田 直裕

幸福度の高い「北欧型福祉モデル」を、日本の現場へ——誰もが自分らしく働き、地域で役割を持てる社会をつくる

株式会社ぬくもりの泉 代表取締役 野田 直裕

取り壊される家と、行き場のない甥——事業の原点

Q. 今の事業につながる原体験や、起業・事業承継・代表就任を決めたきっかけを教えてください。

私が起業を志すきっかけとなったのは、UR都市再生機構の下請けとして、不動産管理の仕事をしていた頃の経験です。まだ十分に使える戸建て住宅が次々と取り壊されていく現場を目にし、「これを何かに活かせないだろうか」と強く感じていました。

一方で、私の甥は全盲で、重度の知的障がいがあり、受け入れてくれる福祉施設がなかなか見つからない現実がありました。

そこで、地域に眠る空き家と福祉を掛け合わせれば、住まいに困る障がいのある方の受け皿をつくれるのではないかと考えたことが、現在の事業につながる原点です。

“地域に眠る空き家と福祉を掛け合わせれば、住まいに困る障がいのある方の受け皿をつくれるのではないか。”

離職が止まらなかったコロナ禍——北欧型福祉モデルとの出会い

Q. 経営人生で最も苦しかった時期や、大きな転機となった出来事を教えてください。その経験から何を学びましたか?

経営人生で最も苦しかったのは、コロナ禍でスタッフが対応に追われ、疲弊し、離職が止まらなくなった時期です。

組織が崩れていく危機感の中、藁にもすがる思いで、海外の福祉先進国に関する情報を集め、オンラインで施設見学にも参加しました。

そこで出会ったのが北欧型福祉モデルです。その考え方を組織運営やスタッフマネジメントに取り入れたことで、職場は徐々に安定を取り戻しました。

この経験から、危機の時こそ外から学び、常識にとらわれず仕組みを変えることの大切さを学びました。

“危機の時こそ外から学び、常識にとらわれず仕組みを変えることの大切さを学びました。”

就労継続支援B型にAI事業部を——可能性を広げる仕事をつくる

Q. これまでに行った大きな意思決定と、その際に大切にした判断基準を教えてください。

大きな意思決定の一つは、就労継続支援B型事業所にAI分野を取り入れ、AI事業部を立ち上げたことです。

北欧型福祉モデルでは、一人ひとりの特性や強みに合った仕事を選ぶことを大切にしています。ITやAIの進化により、ホームページ制作、SNS運用、Webマーケティングなど、障がいのある方も挑戦できる仕事の幅が大きく広がりました。

判断基準は、「本人の可能性を広げられるか」「将来につながる仕事か」という点です。

“判断基準は、「本人の可能性を広げられるか」「将来につながる仕事か」という点です。”

売上より理念——「誰のために、何のために事業を行うのか」

Q. 売上や成長よりも優先して守っているもの、経営において大切にしている考え方を教えてください。

福祉の経営で最も大切なのは、理念だと考えています。

もちろん事業を継続していくためには収益も必要ですが、売上や利益を最優先にするのではなく、「誰のために、何のために事業を行うのか」という理念を何より大切にしています。

利用者やご家族、地域の方々から信頼され、困った時に頼っていただける地域の社会資源になること。その積み重ねが、結果として事業の継続や成長にもつながると考えています。

“売上や利益を最優先にするのではなく、「誰のために、何のために事業を行うのか」という理念を何より大切にしています。”

譲れないのは、北欧型福祉モデルを現場で形にすること

Q. 「この会社だからこそ」と思う強みや、他社と比べても絶対に譲れない価値は何ですか?

私たちの強みは、福祉先進国で培われてきた北欧型福祉モデルを、日本の現場に合わせて実践し、研修を通じて広げていることです。

国内では、まだ取り組む企業は多くありませんが、利用者一人ひとりの特性や可能性を尊重し、地域・医療・福祉が連携する考え方には、これからの日本の福祉をより良くする大きな可能性があると感じています。

この考え方を現場で形にし、全国へ届けていくことは絶対に譲れません。

“未来の福祉を変えるのは、私たち一人ひとりの行動だと思っています。”

最後まで現場に残ってくれた人が、福祉経営の土台をつくってくれた

Q. これまでの経営人生で一番感謝している人と、その理由を教えてください。

経営人生で一番感謝しているのは、福祉施設を立ち上げた当初、最後まで現場を支えてくれたスタッフです。

最初に重度の障がいのある利用者さんを受け入れた際、ケアの負担が大きく、スタッフの離職が相次ぎました。

そんな厳しい状況でも残って支えてくれたその方は、地元の社会福祉法人で管理者を務めた経験豊富な方でした。私自身も実務や支援のあり方を一から教えていただき、現在の福祉経営の土台を築いてくださった存在です。

採用より、「長く働きたい」と思える環境をつくる

Q. 人手不足など「人」に関する課題について、現在感じていることや、取り組んでいることがあれば教えてください。

福祉業界では人手不足が大きな課題ですが、採用だけでなく「長く働きたいと思える環境づくり」が重要だと考えています。

スタッフの労働環境を整え、一人ひとりがこの施設で働くことにやりがいや誇りを感じられる職場を目指しています。

また福利厚生として、企業型確定拠出年金や、ホテルなどを最大80%オフで利用できる会員制度も導入。安心して働き続けられる環境づくりに力を入れています。

10年後、日本の福祉を世界に誇れるものに

Q. 10年後、会社や社会・地域がどのようになっていたら「成功」だと思いますか?そのために必要なことは何ですか?

10年後、北欧型福祉モデルが研修を通じて全国に広がり、日本の福祉が世界に誇れるものになっていたら、それが私にとっての成功です。

障がいの有無にかかわらず、一人ひとりが自分らしく暮らし、働き、地域の中で役割を持てる社会をつくりたい。

そのためには、北欧の制度をそのまま取り入れるのではなく、日本の地域や文化に合った形で実践し、成功事例を全国へ広げていくことが必要だと考えています。

Q. 社員・お客様・これから出会う人たち、そして未来の読者へ伝えたいメッセージをお願いします。

私は、北欧型福祉モデルを日本全国に広げていきたいと考えています。

来年秋には、東京で『世界障害者アジア地域サミット2027東京』が開催され、国連をはじめ世界各国の福祉関係者が集まる予定です。これは、日本の福祉が大きく変わるきっかけになると感じています。

社員、お客様、そしてこれから出会う皆さまと共に、誰もが自分らしく生き、働き、地域で役割を持てる社会をつくっていきたい。

未来の福祉を変えるのは、私たち一人ひとりの行動だと思っています。

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