株式会社TERASU
サボはる
「人」と「想い」を知れば、街はもっと面白くなる。
動画準備中
最初の印象は「何もない」。暮らして初めて見えた春日井の魅力
ノリさん:まず、「サボはる」について教えてください。
サボはるさん:春日井市は「サボテンの街」と言われているので、サボテンの「サボ」と、春日井の「春(はる)」をくっつけた造語です。
もともと僕は宮城県仙台市出身で、大学進学で東京へ出て、その後は全国転勤の仕事をしていました。東北や関東を経て、最終的に名古屋に来たんです。こちらで妻と結婚して、妻の実家やその後の仕事場との位置関係を考えた時に、ちょうど良かったのが春日井でした。
だから最初は、本当に縁もゆかりもなかったんですよ。
ノリさん:最初に春日井へ来た時は、どんな印象でした?
サボはるさん:正直、「何もないな」と思いました。春日井に来る前は栄に住んでいたので、夜に食べに行けるところが少ないなというのが最初の印象でしたね。駅の周りも静かでしたし。
でも、子どもができて、自分の見るポイントが変わったんです。
独身の頃は、居酒屋や飲食店が多いかどうかを見ていました。でも子どもができると、「子どもを連れて行ける場所がどれだけあるか」という目線になる。
そうすると、公園も多いですし、児童センターのような遊べる施設もある。お店もあって名古屋にも出やすい一方で、緑も多い。田舎と都会のバランスがちょうど良くて、すごく暮らしやすい街だと思うようになりました。
僕の出身地の仙台にも少し似ているなと感じます。
ノリさん:住んでいくうちに、最初の「何もない」という印象が変わっていったんですね。
サボはるさん:そうですね。子育てをする中で春日井の良さを感じて、「もっとこの地域のことを知りたい」と思うようになりました。それが発信を始める一つのきっかけです。
“田舎と都会のバランスがちょうど良くて、すごく暮らしやすい街だと思うようになりました。”
会社員から独立へ。「人と関わる仕事がしたい」とたどり着いたSNS
ノリさん:発信活動を始める以前は、どんな仕事をしていたんですか?
サボはるさん:もともとは7〜8年くらい会社員をしていて、いろいろな職種を経験しました。
ただ、何をやってもどこか満足しない自分がいたんです。それで、会社や業種というより、「自分は働き方自体が違うのかもしれない」と思うようになって。
何かで起業したいと思っていろいろな副業をやる中で、最初にうまくいったのが、せどりでした。僕の場合はブランド品のバッグなどを中古で仕入れて、きれいにして、メルカリやヤフオクで販売するような仕事です。
それで会社を辞めて、2年くらい続けていました。
ノリさん:そこからSNSへ移ったのは、どうしてですか?
サボはるさん:せどりは本当に個人で完結するビジネスなので、だんだん面白くなくなってしまったんですよね。
僕は人と話すことがすごく好きなんです。1対1で話すのも好きですし、人前で話すのも好き。
だから、「人と関わりながら収益化できる方法はないかな」と探して、たどり着いたのがSNSの発信でした。
春日井に住んで、この街のことも好きになっていたので、「春日井市を盛り上げたい」という思いで、地域に特化した発信を始めました。
“人と関わりながら収益化できる方法はないかな、と探してたどり着いたのがSNSの発信でした。”
最初の1カ月は毎日投稿。午前に撮影、午後に編集、夜に公開
ノリさん:始めた当初から、地域のお店の方たちは受け入れてくれました?
サボはるさん:ありがたいことに、お店の方からすると僕がPRすること自体は悪いことではないので、ウェルカムな方が多かったですね。
ただ、最初から収益化できたわけではありません。
まずは「サボはるという人間が春日井の魅力を発信している」と知ってもらわなければいけないので、最初は全部無償でPR動画を作っていました。
最初の1カ月は毎日投稿したんです。
毎日投稿するということは、週7回お店に行かなきゃいけない。午前中にお店へ撮影に行って、午後に編集して、夜に投稿する。それを1カ月続けました。
ノリさん:よく1カ月やりましたね。
サボはるさん:本当にそうですね。自分でも、あの行動力はよく頑張ったなと思います。
でも、そこから徐々にフォロワーが増えて、春日井市内で知っていただけるようになりました。最初は無償で走り回って、自分という人間を知ってもらう。そこから少しずつ仕事にもつながっていったという感じです。
今は本当に面白いですね。自分では、遊んでいるような感覚もあって、後から仕事やお金がついてきているような感覚があります。
“最初は無償で走り回って、自分という人間を知ってもらう。”
「教えてほしい」が増え、発信する側から“発信を広げる側”へ
ノリさん:活動の中で、ターニングポイントになった出来事はありますか?
サボはるさん:誰か一人との出会いというより、発信について人前で話したことが大きかったと思います。
僕は話すことが好きなので、フォロワーが増えて「発信方法を教えてください」と言われる機会が増えた時に、小さな会議室を借りて、15人くらいの方に向けて話をしたことがあるんです。
「こういう発信をするとフォロワーが伸びやすいですよ」「こうすると成果が出やすいですよ」という内容で、発信を始めて2カ月目くらいの頃でした。
そこから、「うちの会社でもやってくれませんか」「生徒たちにも話してほしい」「団体でもやってほしい」という依頼が増えて、一気にサボはるの認知が広がった感覚があります。
ノリさん:今もセミナーには力を入れているんですよね。
サボはるさん:そうですね。
活動を始めた時から「春日井市を盛り上げたい」という思いで、いろいろなお店や企業、人の想いを発信してきました。
でも、僕一人の発信には限界があります。
だったら、経営者や事業者のみなさん自身の発信力が上がれば、それぞれのサービスをもっと多くの人へ届けられる。
僕一人が発信するのではなく、事業者さんの発信力を上げる活動をすれば、僕一人の発信を足していく『1+1』ではなく、それぞれの発信力が掛け合わさる『1×X』のように広がっていくと思ったんです。
だから今は自分でセミナーを開催したり、経済団体などから声をかけていただいて、発信についてお話ししたりすることにも力を入れています。
“僕一人の発信を足していく『1+1』ではなく、それぞれの発信力が掛け合わさる『1×X』のように広がっていく。”
掘れば掘るほど出てくる。春日井には「自分の商品に誇りを持つ人」がいる
ノリさん:いろいろな方と関わってきて、春日井の人や事業者に感じる魅力はありますか?
サボはるさん:春日井は、事業者さんが多い街だと感じています。
チェーン店ももちろんありますけど、個人経営のお店や、地域に根ざした事業・施設も多い。
そういう方々と直接お話しすると、自分の事業に対する責任や自覚をすごく感じるんですよね。
決められたものをただ売るというより、自分が良いと思っている商品を作ったり、自分が良いと思っているサービスを届けたりしている。
事業者が多い分、自分たちの商品やサービスに誇りを持っている人も多い街なんじゃないかなと思います。
春日井は、掘れば掘るほど出てくる街ですね。
ノリさん:春日井らしさという部分ではどうですか?
サボはるさん:やっぱりサボテンですよね。
サボテンの生産者さんもいますし、それを使った料理や商品を提供している方もいます。そういう方々の「サボテンをもっと広げたい」という想いはすごく感じています。
一方で、市民とのギャップもすごく感じるんです。
僕自身もそうだったんですけど、市民はそこまで「サボテンの街」という感覚を持っていなかったり、サボテンの魅力を十分に感じていなかったりする。
だから、サボテンに想いを持って取り組んでいる方たちの考えをもっと発信していって、地域全体で打ち出していけたらいいなと思っています。
“春日井は、掘れば掘るほど出てくる街ですね。”
一本の動画で100件の予約。「必要としていた人」と事業者をつなぐ
ノリさん:実際に、サボはるの活動を通して「人と地域をつなげられた」と感じることはありますか?
サボはるさん:分かりやすい成果で言うと、車関連のサービスをPRさせていただいた時に、僕のPR動画一本から、1カ月で100人の予約が入ったことがあります。
数万円から数十万円するサービスだったので、そこは目に見える成果として分かりやすかったですね。
サロンのようにターゲットが限られる業種もやらせていただきます。
なかなかお客様が来なくて経営が厳しいというお店から、「最後の頼みの綱」という形でお問い合わせをいただくこともあります。
その中では、2万円、3万円するエステサロンを紹介したところ、今では予約が取りづらいくらいになり、全国から人が来るようになった例もあります。
そういう結果を見ると、人をつなげられたという実感はありますね。
事業者だけでも、視聴者だけでもない。「需要と供給が重なる場所」を探す
ノリさん:発信をつくる時は、事業者側と視聴者側、どちらを重視するんですか?
サボはるさん:そこは両方のバランスが大事です。SNSの一番の“みそ”だと思っています。
まず、動画を最後まで見てもらわなければ意味がありません。
事業者さんの伝えたいことだけを汲み取って発信しても、視聴者からすると「それは別に求めていない」となって、途中で離脱してしまう。
だから最初に、届けたいターゲットを決めます。
その人たちが何に悩んでいるのか、どんな課題を持っているのかを洗い出して、そこに事業者さんの想いがマッチする場所を探すんです。
ノリさん:事業者と視聴者の間に、サボはるさんが入る。
サボはるさん:そうです。
需要と供給がマッチする場所を見つけて、それを台本に入れ、企画として届けていく。それが僕の仕事だと思っています。
地域密着で活動しているからこそ、直接「ありがとう」と言っていただける機会も多いんです。
事業者さんから感謝されるパターンと、視聴者さんから感謝されるパターンの両方があります。
お店や企業を僕が紹介して、問い合わせが増えれば、事業者さんには喜んでもらえる。
一方で視聴者さんにも、「自分が求めていたけれど、存在を知らなかったから出会えていなかった」という人がたくさんいると思うんです。
そこを僕が架け橋になってつなげられる。
双方から感謝してもらえることが、この活動の大きなやりがいになっています。
“需要と供給がマッチする場所を見つけて、それを台本に入れ、企画として届けていく。それが僕の仕事だと思っています。”
「サービス」だけではファンになれない。伝えたいのは、その人の背景
ノリさん:サボはるの発信を見る時に、「ここを見てほしい」という部分はありますか?
サボはるさん:あります。事業者さんのバックグラウンドです。
僕が一番伝えたいのは、そこなんですよね。
サービスの内容だけを伝えても、それだけではファンにはなれないと思っています。
「この人はどんな経験をしてきたのか」「どんな想いがあって、この事業やサービスを始めたのか」。
そこを知ることで、サービスを利用する時の安心材料にもなるし、信頼にもつながると思うんです。
僕自身、いろいろな事業者さんに会って、その方たちの想いを知っているから、何かを利用するならその人のところへ行きたいと思います。
単純に料金の高い、安いではないんです。
同じようなサービスがあったとしても、少し高かったとしても、「この人にお願いしたい」と思える。
その感覚を、発信を見てくれるみなさんにも感じてもらいたいですね。
“同じようなサービスがあったとしても、少し高かったとしても、「この人にお願いしたい」と思える。”
バズることがゴールではない。大切なのは「その先に何があるか」
ノリさん:自分らしく発信することと、多くの人に見てもらうことでは、どちらを大切にしていますか?
サボはるさん:大前提として、見てもらわなければ意味がないので、発信をつくる入口としては、まず視聴者さん側ですね。
業界で言うと、「プロダクトアウト」と「マーケットイン」という考え方があります。
自分が伝えたいことを発信するだけではなく、市場や視聴者が求めていることに対して発信していく。サボはるでは、後者を大事にしています。
Instagramの場合、僕の活動ではYouTubeのように再生数そのものを収益の目的にしているわけではありません。だから最終的に「何をゴールにするか」が大切なんです。
サボはるの発信を市民のみなさんに見てもらい、ファンになっていただいて、その方たちに地域のお店や企業を紹介し、つなげることを目的にしています。
だから、バズることがすべてではありません。
10万回、100万回再生されたとして、その先で何につなげたいのか。
それよりも1万回の再生から、実際の集客につながった方がいい場合もあります。
僕が春日井市に特化しているのも、そういう理由があります。
“10万回、100万回再生されたとして、その先で何につなげたいのか。”
企業SNSでは「その会社の一人」になる。難しいからこそ、やりがいがある
ノリさん:今は企業のSNS運用もされていますが、難しさもありますか?
サボはるさん:めちゃめちゃ難しいですね。
セミナーや相談会をすると、「理屈は分かったけど、自分たちにはリソースも技術もありません」という企業さんも当然います。
そういう場合は、僕が企業のSNS運用をお手伝いすることになるんですが、そこで必要なのは、僕自身が、その企業の一員になるくらいの感覚で入り込むことなんです。
会社の中に入り込んでいかなければいけない。
目的も会社によって異なり、集客、認知拡大、採用などさまざまです。
その目的に合わせて、一緒に企画やコンセプトを考えて、動画を作り、編集して投稿するところまでワンストップでやっています。
でも、フォロワーを増やせばいいというものでもありません。
ノリさん:実際に、うまくいった事例もありますか?
サボはるさん:学童保育のSNSを運用させていただいている例があります。
そこは約300人の生徒がいる学童保育で、2年先まで定員が埋まっています。
だから、「集客のためにInstagramをやる」という話ではないんです。
定員が埋まっているからこそ、自分たちの理念や考え方を事前にきちんと伝えて、「入ってみたら思っていたのと違った」というミスマッチを減らしたい。
そういう目的で発信しています。
半年間の運用で、フォロワーは0から約1.5万人まで増えました。入会についての問い合わせだけでなく、「ここで働きたい」という採用の問い合わせや、他県から「同じような学童保育をつくりたい」と見学に来る方も出てきています。
もともとは認知拡大という一つの目的だったものが、採用などさまざまなところへ派生していった。これは、僕の中でもうまくいっている事例の一つです。
一方で、採用を目的にしたSNSは、また難しさが違います。
今まで自分が経験していない業界であれば、まず業界を理解し、その会社を理解しなければいけない。その中から会社の魅力を見つけて、さらに求職者が何に悩んでいるのかを考えて、何を発信するかを決める。
難しいですけど、やりがいはめちゃめちゃありますね。
“僕自身が、その企業の一員になるくらいの感覚で入り込む。”
デジタルに見えて、やっていることは「人に会って、話を聞く」
ノリさん:こうして聞いていると、SNSというデジタルな仕事ですけど、だんだん職人的な仕事にも感じますね。
サボはるさん:そうですね。行動自体は全然デジタルじゃないですよ。めちゃめちゃ泥臭いです。
媒体がデジタルなだけなんですよね。
人に会いに行って、話を聞いて、その人や会社の魅力を探す。
そのうえで、見る人が何を求めているのかを考えて、両方がつながるところを見つけて発信する。
結局、僕がやっているのはそういうことなんだと思います。
春日井には、自分の商品やサービスに誇りを持っている人がたくさんいます。そして、その存在をまだ知らない人もたくさんいる。
だから、その間に立ってつなげていく。
事業者さんが持っている想いや背景まで伝えることで、そのお店や会社自体のファンになってもらう。
それが、サボはるとして発信するうえで大切にしていることですね。
“行動自体は全然デジタルじゃないですよ。めちゃめちゃ泥臭いです。”